鎖を解かれたメテウス

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アルドノア・ゼロ12話 感想と考察+aLIEzのドイツ語歌詞について

 アルドノア・ゼロ12話を見終えて考えたことを、スレインの分析を中心につらつらと。

 

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 スレインというキャラクターは、なんとなくFate/stay night間桐桜と近い部分がある(あくまで“近い”だけ)ような気がします。家族と過ごした幸せな幼年時代がありながら、途中で別の場所で暮らすことになり、その先でひどく虐げられる。人間として扱われない。そんな彼/彼女には唯一自分を人として扱ってくれる拠り所があります。間桐桜にとってそれは衛宮士郎、そしてスレインにとってはアセイラム姫。スレインはその拠り所があるからこそ、どんな目に遭おうと我慢していられる。だからこそ、その拠り所を守るためなら何だってできるのです。初めての人殺しであったトリルラン卿の時こそスレインはがたがた震えていますが、その後はためらいを持たずに人を殺せるようになっているのがその証拠。

 それでも彼は、まだ子供でした。子供だから、殺す一方で情けをかけることもやめられなかった。その結果、アセイラム姫は撃たれてしまいました。

 というわけで、「ではその拠り所が消えた時、彼はどうするのか?」ですが、ここでちょっと、12話でザーツバルムがイナホと戦いながら口にしていた台詞を引用します。


ザーツバルム:わかるまい…貴様らには!植え付けられた地球人への羨望と憎しみがいつまでも我らの魂を濁らせ続け、人としての生き方を奪った。豊かな地で漫然と生きる者に我らの思いはわかりはすまい。憎しみを植え付けられた恨み、それに気付いた時の虚しさ、愛する者を守れなかった無念、わかりはすまい!我は憎む全てを倒し、憎しみの連鎖を断つ!

 

 住む星が違えども同じ人間であるとわかっている、だというのに地球人を「劣等人種」と憎しみや嘲りを込めて言う理由は羨望に帰結するのだという、伯爵の口を通して語られる火星人の本音。この言葉の直後、スレインが伯爵を助けに入ります。憎しみを叫ぶザーツバルムを助けるスレイン。この演出は、見方によってはスレインが伯爵の考えを支持している(少なくとも否定はしていない)と受け取れます。

 ザーツバルムは地球で愛する者を失い、憎しみに突き動かされた結果姫の暗殺を企て実行に移しました。

 そしてスレインもまた、地球で愛する姫を失(ったと思い込んで)います。

 ザーツバルムの憎しみを理解し、また彼と同じように大切な人を守れなかったスレインの辿る道は、これで確定してしまったように思います。憎しみに突き動かされ、それを他者に向けずにはいられない生き方です。

 

 12話の前半で、アセイラム姫が「ヴァースが憎いですよね」と言い、それに対してイナホが姫に語りかけるシーンがありました。以下会話の引用。

 

イナホ:セラムさん、どうすれば戦争が終わるか知っていますか。
アセイラム姫:それは、平和を願い、憎むことをやめれば…
イナホ:いいえ。戦争は国家間の交渉の手段でしかない。憎まなくても戦争は起こる。どうしても手に入れたい領土、利権、資源。思想や宗教やプライド。それらの目的を巡って戦争は起こる。だからその目的が果たされれば、戦争は終わる。または、利益に見合わない数の人が死ねば戦争は終わる。怒りも憎しみも、戦争を有利に運ぶための手段でしかない。僕はそんな感情に興味はありません。だから、僕は火星人というだけで憎いとは思わない。

 

 そこに割り込む形でザーツバルムが「そうか?我は地球人というだけで憎いがな」と言い、イナホとは真逆の考え方であることを示してきます。この意見の相違は、ザーツバルムと同じ側に立つスレインとイナホの相違にも通じるのでしょう。

 

 イナホは「戦争を終わらせるために戦う」人間として、対してスレインは「姫のために戦う」人間として描かれていました。そしてアセイラム姫は「平和のために戦いに終止符を打ちたい」人間なのでイナホ寄りです。この「何のために戦うかの違い」は、同じ虚淵作品である魔法少女まどか☆マギカのまどかとほむらの対立にも似ています。まどかは正義のために魔法少女になり、ほむらは愛のために魔法少女になるのですが、「一番に守りたいものが違う」ために二人はどこまでも相容れません。互いを大事に思いながらも、守りたいものが違うために噛み合わないのです。戦争を終わらせる(=平和)のために行動するアセイラム姫とイナホ、そして姫(=愛)のために行動していたスレインたちもまた、おそらく噛み合わない。

 しかし、イナホとアセイラム姫を同じ側としていいのかはちょっと迷うところ。姫は平和や秩序を一番に考えていますが、イナホは平和を第一に考えつつも、姫への愛のために行動していると取れる描写が後半に散りばめられていたからです。なのでイナホは姫とスレインの中間にいる人間なのかも?とすれば、彼が姫とスレインの仲を取り持つ架け橋的存在になる可能性もあるのかな?とも考えてしまいます。

 

 ここからは2クール目の希望を多分に含んだ予想ですが、1クール目は(スレインの行動にだけ注目すれば)スレインがアセイラム姫を助けるために奔走する話だったので、2クール目は(もし生きていれば)アセイラム姫がスレインを助けるために奔走するという立場のひっくり返った話になるんじゃないかなと思います。憎しみを動機に動く彼を、アセイラム姫が止めようとするお話に。

 

【追記】

 aLIEzの歌詞について少し。この歌の歌詞や訳・解釈関連のブログで、歌詞のドイツ語の間違った読みを載せてる方がいらっしゃいました。少しですがドイツ語を学んだ身としては居たたまれなくなったので、辞書に書いてある読みを確認しつつラストのLeben, was ist das?~で始まる部分のドイツ語読みを載せておきますね。

 

Leben, was ist das?

レーベン ヴァス イスト ダス

Signal, Siehst du das?

ズィグナール ズィースト ドゥー ダス

Rade, die du nicht weisst

ラーデ ディ ドゥー ニヒト ヴァイスト

Aus eigenem Willen

アウス アイゲネム ヴィレン

Leben, was ist das?

レーベン ヴァス イスト ダス

Signal, Siehst du das?

ズィグナール ズィースト ドゥー ダス

Rade, die du nicht weisst

ラーデ ディ ドゥー ニヒト ヴァイスト

Sieh mit deinen Augen

ズィー ミット ダイネン アウゲン

 

 以上です。単語の正しい読みを載せましたが、歌の中では英語のそれと同じように語尾の省略やなんやがあります。和訳については、これは歌詞カードには載っていないんですかね?私は3年しかドイツ語を習っていないので、英語を習い始めて3年の、謂わば中学3年生くらいのガタガタな訳しかできません・・・。